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青森県下北郡風間浦村蛇浦赤平。かつての蛇浦村。盛岡藩領。田名部通に属します。正保4年南部領内惣絵図には「蛇ウタ」とのみ見えます。蛇浦村は海岸線まで山が迫る山村的漁村であり、地先の海産物と松前への出稼ぎが生活基盤となっていました。中浦に属し、享保6年に天当小廻船2艘・漁船8艘を有し、享保年間には塩釜1があり、安永9年には地船1艘、漁船6艘を持っていました。享和3年に幕府から佐井が函館渡航地に指定されたことにより、文化4年下風呂境滝から蛇浦の岩崎まで新道開削。これに伴って人足伝馬の徴発が頻繁となり、文化8年北通り村々による田名部町定役銭減免愁訴が行われ、肝入宇兵衛も訴状に連署。明治初年の国誌では戸数56、「町並に家居し小店あり」とあり、やはり田畑は少なく漁業で生計をたて、北海道への出稼ぎがあり(出稼者数65人)、明治以降も生活基盤に変化はありません。明治15年に仲買人鈴木惣兵衛から青森県令に出された前年物資輸出入調によりますと、輸出にコンブ・フノリ・スルメ・乾アワビがあり、輸入は米・酒・塩・菓子などとなっており輸出超過。明治16年の河西粛四郡長への内申によりますと、「海産に富み、村内一般に富裕なり」とあり、明治19年の柴太一郎郡長への内申では漁労と出稼ぎをもって生計をなし、富者も貧者もないとしています。菅江真澄の「牧の冬枯」には次のように記されています…『(前略)釜谷の浦にでた。ここの実の名は蛇浦というが、農漁民のなりわいに蛇を忌むことがあるので、一般に蛇浦とはよばないという。』※農漁民は労働に従っているとき、蛇とはいわず、忌みことばで長虫といいました。地内に見える折戸神社ははじめ折戸山に鎮座。後に村内の稲荷神社に遷されています。下北半島史では元和3年の勧請、国誌では不詳なれど享保年間の勧請としています。旧村社。産土神。邦内郷村志には稲荷社と見え、貞享3年の勧請。なお、同書には弁才天堂(漁船為平安往古村中建之)も見えます。寺院としては慶安2年勧請の慈観軒が見え、現在は再興されている大海寺です。
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水盤(明治15年7月)。
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春日灯籠(明治38年3月)。
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春日灯籠一対(明治37年7月)。
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神前型灯籠一対(昭和53年12月吉日)。
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狛犬一対(明治37年7月)。
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社殿。本殿脇障子は明治8年4月奉納。なお、奥の院の御神体は天児屋根命。また、奥の院の神は女神様で、昔火事があった時に空から火を消したという伝説を残します。
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8月には蛇浦折戸神社祭典があります。毎年8月14日(宵宮)・15日・16日。この祭典は宵宮に行われる遷座式から始まります。町から4kmほど離れた折戸山(本州最北端の山・標高119.1m)の折戸神社奥の院に安置されている御神体を、風間浦村蛇浦赤平の当折戸神社に迎えます。つまり1年に4日間だけ神様が集落近くの折戸神社に移ります。古式の慣習で厳粛に遷座式を挙行しているのはむつ・下北地域では珍しい行事。現在の例祭では神楽渡御や子供ねぶたの運行だけでなく、漁港にステージを設け盆踊りや灯篭流し、カラオケ大会を行うなど地元民をより楽しませるプログラムが組まれているようです。御神輿は約160年前に京都で造られたもの。
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社殿内。鶴の額(明治26年12月・願主五十苅栄作)があり7つの俳句が書かれています。
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神社庁によりますと、御祭神は天児屋根命(※奥の院)。例祭日は8月15日。享保年中の頃に氏子が勧請し小社を建立。天保15年8月の大風により小社・棟札共に飛び去り紛失したため由緒不詳。明治6年5月寺社調査により村社列格。
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折戸神社…『御祭神:倉稲魂命(御稲荷様)。由来:その昔蛇浦は釜谷ヶ浦とも呼ばれ漁業の邑として開拓された。(年代については不明である)元来此の邑は、昆布、若芽、天草等海業ならびに鮑、ウニ等が豊富に繁殖したことは有名である。また背後の山地は、巨大美林が海に迫り耕地にも恵まれ遠い祖先の親達は人情に厚く釜谷衆と親しまれ平和に栄えた。邑人達は海の幸、山の幸は産土様のお授けによる恵みとして心深かく感謝し子孫繁栄を祈り折戸山とならんで此処赤平坂に稲荷神社を建立したのが貞享3年であった。明治6年一村一社の令によって翌明治7年両社一体とし村の弥榮を祈願し折戸髙山を奥の院として祀り(下北半島史による)社号を折戸神社と定めた。毎年8月大祭には折戸髙山の社から4粁の行程を厳粛に行列を整え神楽囃子も賑かに御神霊の渡御を御迎えする祭事は全國的にも類なき神事と髙く歴史家の評讃を呼ぶところである。社は長年の風雪に朽ち果て修築の功なく折戸髙山の社は昭和47年8月に此処赤平坂の社は昭和52年氏子の総力を注ぎ現在地に神明造りにて着手、翌53年4月22日(旧3月15日)大願成就落成による御開扉拝観の儀式が近時稀なる盛大祭事が執行、今日に及んだものである。主要祭事:例大祭8月15日、春祭5月8日、秋祭11月1日。昭和63年10月9日折戸神社氏子総代』
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折戸神社入口付近に山道があります。手摺りもありますが荒れていたため行ってません。
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一之鳥居脇にある社。
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井戸のような手水舎。
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社殿。
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石上社。
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同じ境内地になるのかも知れませんが、道を挟んで隣にも赤い鳥居が見えます。
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石灯籠一対(萬延元庚申年旧7月吉日)。
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19.4
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狛犬一対(平成28年6月5日・氏子団体一同)。
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弁天社。
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御神木。
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弁天社から見た折戸神社参道の松。
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